微酸性電解水によるノロウイルス対策について

2006年後半から猛威を振るっているノロウイルスですが,今回の流行は従来指摘されてきたカキなどの二枚貝を原因とするものではなく,空気感染等による患者からの二次感染が中心であると言われています.

厚生労働省はノロウイルスの予防対策として,手洗いやうがいの励行とともに次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた消毒が効果的であることを示しています(「ノロウイルスにご注意!」参照).

では,同じく次亜塩素酸が主成分である酸性電解水(次亜塩素酸水)についてもノロウイルス対策に用いることが出来るのでしょうか?という質問が弊社にも寄せられました.

これまでに酸性電解水のノロウイルス対策への適用の可否について公的な見解は示されていませんでしたが,この度,機能水研究振興財団よりノロウイルス対策において酸性電解水が有効であるとのコメントがリリースされました.それによると,ノロウイルス対策として酸性電解水を使用する場合には,いくつかの注意点が指摘されています.以下にその内容を抜粋し,紹介いたします.(機能水研究振興財団のご厚意により内容を一部転載させていただいております.赤字部分は弊社で追記したコメントです.)

【殺菌力に優れた酸性電解水を用いた,さまざまな場面での消毒方法】

1. 手洗い

 酸性電解水の流水による30秒以上の手洗いが効果的です.東京都食品安全情報評価委員会でも酸性電解水による手洗い(もみ洗いとすすぎ)効果を報告しています.通常の手洗い後,酸性電解水で洗うとより効果的です.

 酸性電解水は流水による物理的な洗い落とし効果とともに,それ自身に殺菌力があるため,より効果的に手指の殺菌を行なうことが可能です.もちろん次亜塩素酸ナトリウム溶液では直接手洗いすることは出来ません.弊社ではセンサーによるハンズフリー手洗い装置等もご紹介させていただいております.詳細はお問い合わせ下さい.

2. うがい

 水道水でうがいするときと同じようにうがいします.口に含むと独特の違和感がでますが,特別の問題は生じません.ただし,異常を感じられたときは中止することをおすすめします.

 酸性電解水を口に含むと,特に強酸性電解水では何ともいえない不思議な味覚を感じ,人によっては不快に感じる方がいるかもしれませんが,問題はありません.手洗い同様,次亜塩素酸ナトリウム溶液でうがいすることは当然出来ませんので,人に優しい酸性電解水ならではの使用法といえます.

3. 体の清拭

 できればぬるま湯程度に温めた酸性電解水でまず体表面が濡れるように拭いた後,酸性電解水で絞った清潔なタオルなどで一方通行でふき取ってください.おう吐物や便で汚れている場合はそれらを取り除いてから酸性電解水を使用してください.

 酸性電解水は加温することにより殺菌力が高まることが知られています.汚染物が多い場合,酸性電解水の失活が速くなるため,タオルはまめに洗浄し,常にフレッシュな酸性電解水を使いましょう.

4. トイレ,床その他の室内環境の清拭

 酸性電解水をかけるか噴霧によって濡れるようにし,2,3分おいてからふき取ります(一方通行で).流し台も同様です.ただし,多量のおう吐物や便で汚れているときは,酸性電解水だけで処理するのは危険です.汚物は手袋(ゴムやビニール)をして扱い,厚労省が薦める処置(「ノロウイルス対策Q&A」)をした後,後始末に酸性電解水を上述のように使います.

 下線部分が重要なポイントです.この場合,多量の嘔吐物や便により酸性電解水が失活してしまうことが予想されます.大量の酸性電解水が使える環境で無い場合は,厚生労働省が薦める1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液による消毒が賢明です.

5. 器具・机など

 4.の場合と同様の処理をします.緊急処置として洗濯機の洗濯槽を酸性電解水で洗うこともできます.ただし,洗った後水道水ですすぎをきちんと行ってください.

 酸性電解水は金属腐食性があるため,金属製の洗濯槽などは注意が必要ですが,水道水で十分すすぐことで腐食の心配はなくなります.

6. 衣服など

 飛沫などによりノロウイルス汚染した場合、応急処置として酸性電解水をかけるか噴霧して濡らした後、次亜塩素酸ナトリウム液で処理してください.

 最近では100円ショップなどでペットボトルに取り付けるタイプの霧吹きが売られています.酸性電解水は500mlのペットボトル(注 中身を十分洗浄してから使用すること)に小分けしておくと便利です.栓はしっかりしておきましょう.

7. 食材・食器

 酸性電解水の流水中で十分に洗浄します.

 洗浄後はそのまま乾燥させれば再び使用できます.スプーン・フォーク等金属性の食器については,酸性電解水による洗浄後に水道水ですすぎを行なってください.

補足資料: 次亜塩素酸ナトリウムのつくりかたの例 塩素系の漂白剤であるキッチンハイター(塩素濃度約5%として)を使用して各種濃度のものを調製する方法が以下のように示されています.
 15リットルのバケツに水を5リットル入れ,以下の量のハイター液を加える(※調製の際はゴム手袋等を着用の上,換気の良いところで行ないましょう.)

 ・0.02%(200ppm)をつくる場合: 20ミリリットル(ハイターのキャップで1杯弱)

 ・0.05%(500ppm)をつくる場合: 50ミリリットル(ハイターのキャップで約2杯分)

 ・0.1%(1,000ppm)をつくる場合: 100ミリリットル(ハイターのキャップで約4杯分)

 

※国立感染症研究所感染症情報センターの資料に基づく