セレウス菌による院内感染が発生
自治医科大学病院(栃木県下野市)で7月から8月にかけて,発熱する入院患者が増え,病院が調べたところ,うち二十数人の血液から,食中毒などを起こすセレウス菌が見つかっていたことが13日わかった.このうち2人は死亡しており,病院は院内感染の疑いがあるとして,県医事厚生課に届けるとともに,感染経路や死亡との因果関係について詳しい調査を始めた.
セレウス菌ってどんな菌
セレウス菌(Bacillus cereus)は,納豆菌などと同じグループに属するグラム陽性桿菌で,耐熱性や耐薬品性などを持った非常に堅牢な「芽胞」を形成する「芽胞菌」の一つです.様々な環境から普遍的に見出される菌で,古くから食中毒の原因菌として知られていましたが,院内感染の原因となったのは我が国では今回の事例が初めてのようです.
セレウス菌はごく身近な菌の一つで,土壌中や空気中など様々な場所から検出されます. 通常は栄養細胞と呼ばれる状態で増殖し,この段階では熱や薬剤に対して特に強い訳ではありません.ところが,生育環境の悪化などが引き金となって「芽胞」の状態になると,熱,乾燥,紫外線,薬剤などに対して非常に強い耐性を示すようになります. 古くから食中毒の原因となる菌として知られ,米飯や麺類などのデンプン系食品からの食中毒が多く発生しますが,発生には大量の菌量が必要とされます.
セレウス菌の検査
弊社では選択培地(卵黄加NGKG寒天培地または)によるセレウス菌の検査を実施しております.写真に示すように,セレウス菌のみを選択的に検出することが可能です.
《左図》 卵黄加NGKG寒天培地によるセレウス菌(B.cereus)の選択性
① Bacillus cereus (セレウス菌)
② Bacillus subtilis (枯草菌)
③ Escherichia coli (大腸菌)
④ Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)
セレウス菌は周縁不規則で白色のやや厚みのある集落を形成し,卵黄反応陽性を示す. セレウス菌以外の細胞の発育は強く抑制され,もし発育してもその集落は小さく,卵黄反応は生じない.